「きれいだなあ。」

千がぽつりとつぶやいた。

「本当だね。」

私も寝そべろうとした時、千が起き上がった。

「秋花ってさ…今は誰がすきなの?」

「えっ…?」

「俺、修学旅行で別れたあの日から…ううん、初めて別れたあの時から、ずっと秋花を待ってるんだ。」

千は顔を隠すように言った。

「千…ずっと待っててくれたの…?」

私は嬉しさでいっぱいだった。

「さ、帰ろうか。」

家に帰るとお父さんとお母さんが心配な面持ちで待っていた。

「千君、ありがとうね。こんな遅いのに…。」

「いえ、じゃあ失礼します。」

千はぺこりと頭を下げると私に手を振って行ってしまった。

お父さんは終始しかめっ面だったが、私に何もなくて安心していた。

季節は夏。

私と千のスタートだった。