祭が一段落着いて、盆踊りが始まった。

上から盆踊りを眺めていると美紗の携帯が鳴った。

「お母さんからだ~。もう駅にいるみたいだけど…。」

美紗が私の顔を見ながら言った。

「うん、行こうか。」

「秋…さっき、千いた。」

美紗の言葉に少しうろたえたが、私は答えた。

「知ってるよ。見たもん♪」

「千のとこ行かなくていいの?」

「…?メールしてるし、行く用事なんかないよ?」

美紗の言葉の一つ一つが突き刺さる。

嫌な予感がした。

「千ね、さっき女の子といたよ。よくわかんないけど、楽しそうに話してた…。秋、もう千のことすきじゃないの?」

私の顔が強張った。

「…す…きっ…!!」

「行きなよ。何もないかもしれないけど…気持ち伝えておいで。」

美紗の一言一言が嬉しくて…私は多くの人に支えられないと恋もできないのか…そんな弱い自分も悟って、涙が出てきた。

「ありがと…っ!!また…ねっ!!」

美紗に背を向け、私は浴衣のまま走り出した。

千に会いたくて…

千に伝えたくて…

千に電話をかけようとしたのに、電池切れで…こんな時に限って役に立たない。

(家!!)

そう思って、千の家へ続く道を走った。