少女は不思議そうな表情で俺を見ている。

「随分と魘されていたけど大丈夫??顔色もいつもより一段と青白いわ」

少女は立ち上がり踵を上げてつま先に力を入れ、俺の頬に触れた。

「青じそのアイスクリームの海で溺れる夢を見たんだよ。だから、いつもより顔色が悪いんだ。結構なファンタジーだろ??」

俺のくだらない冗談を少女はクスッと音の無い笑いをした。

「ストロベリーのアイスクリームの海ならファンタジーだけど青じそはホラーよ、ホラー」

別に本当のことを言うつもりは無かった。
言ってもしょうがないし、何の傷害もないからだ。
ただの夢に過ぎない。

それから少女に今は朝だと告げられ、今日で6日目が経ったのだと分かった。

それから数分他愛のない話を繰り広げていた。
すると、廊下の方から複数の足跡が聴こえてきた。

「奴らかもしれない。隠れて」

少女は少し困った顔を見せた。そして、思い付いたように自分自身の胸元で手の平を叩いた。

「悪い人たちの登場ね」

少女は有名人に遭遇したかのように瞳を輝かせている。しかし、そんな場合じゃない。

俺は少女を急かすように手術台の下に隠れるように指示をした。
少女は背筋を伸ばして敬礼をした。『了解』

何が楽しいのか分からないが少女は濁りの無い満面の笑みを浮かべている。

そうしている間に足音は手術室の方へと近づいていることを音のボリュームが物語っている。

手術台には白いビニールシートが覆っているため隠れる事が出来るのだ。
しかし、そのビニールシートを剥がされると厄介だ。
だが、手術室に隠れる所などはない。当たり前だここは手術室なのだから。

知らぬ間に俺の鼻の頭には汗が吹き出ていた。
恐らく、緊張感がそうさせたのだろう。

手術の扉が開き数名の男が姿を見せた。