少女が手術室を去ってから瞼を閉じて少女のことを考えた。

少女が記憶がないのは何故だろうか。
何故こんな人気のない廃墟に居るのだろうか。

一体誰がこの廃墟に少女を置き去ったのだろうか。
少女に食料を支給している人物は少女を置き去りにした人物と同一人物なのか。

俺の頭の中で沢山の謎が思考回路で渋滞している。
謎と謎が渋滞に苛ついてクラクションを鳴らしている。

恐らく、今の段階ではこの耳障りな雑音は消えることは無いだろう。

だが、ひとつだけ分かったことがある。

少女は『月に一回のペースで食料が送られてくる』と言っていた、それは少女が最低2ヶ月前からこの廃墟に居ることを意味している。

考え過ぎてパンクしそうな脳を休めるために俺は眠ることにした。

狭い正方形の中に一人の男が椅子に座っている。
椅子は木材で出来ており、角には花の彫刻が彫られていて美しい。
恐らく日本製ではなくイタリア製だろうと思う。

男の目の前には長方形のテーブルがあり、真っ白なテーブルクロスが敷かれている。

テーブルの上には一般的に言われる豪華な料理がぎっしりと並べられている。

だが、男は食べることなく料理を眺めているのだ。

最初は何故かと思ったが男の姿をよく見ると、すぐに納得出来た。

手足を紐で縛れているからだ。

しかし、妙なことに縛れて座っている男は笑みを浮かべているのだ。

まるで愛しい物を眺めている様な柔らかな表情をしている。

その目線の先には何があるのだろうかと気になり、男の目線を追っていくとテーブルの端に人が座っているのが分かった。