その時ね、今すぐにでも飛び出してお兄ちゃんの側に行きたかった。
でも、知らないおじさんがお兄ちゃんの隣に居たから怖くて地面を蹴ることができなかった。

二人はおばあちゃんを縁側に転がして、口から流れている血液をハンカチで拭った。
その動作が終わるとおじさんとお兄ちゃんは庭から外に出ようとした。

恐らく、見つけやすい場所におばあちゃんを放置して早く他人に見つけてもらおうとしたのね。
そうでしょ??お兄ちゃん。
でも、何でそんな危険を犯してまでおばあちゃんを見つけやすい縁側に移動させたのだろうか。
あの状況でこんなことを考える私も異常者よね。

お兄ちゃんとおじさんが庭から出ていったのを確認しておばあちゃんが倒れている縁側に行った。
近くでおばあちゃんを見ると顔は白く身体に血液が全く流れていないようだった。

そんな時、真上に雲が止まっているかのように私が立っている縁側だけに影が出来ていることに気づいた。咄嗟に後ろを振り向くとお兄ちゃんとおじさんが立っていて怖い形相で私を見ていた。
私は驚き縁側に腰をついた。

何か喋ろうと言葉を作っても声に変換することは出来なかった。
お兄ちゃんに会えて嬉しかったのに何も伝えられなかった。
それと、何でおばあちゃんを殺してしまったのかも知りたかった。

そんなことはお構い無しにお兄ちゃんがポケットからナイフを取り出した。
太陽の光とナイフの刃が重なって鮮やかな虹色を作り出して美しかったのが印象に残った。