黒く輝く瞳と黒いワンピース、黒と対立するように真っ白で生命力をまるで感じさせない肌の色が目立った。

しかし、一番印象的なのは背中まで伸びている髪だった。

艶やかで羽根のような柔軟な柔らかさを感じさせ、色は黒とは違う異様な魅力を放っている。

言うなれば、『漆黒』と言った方が分かりやすいと思う。

そんな少女が俺の目の前まで近づき、俺を見上げているのだ。

少女は不思議そうな顔をしながら、あるべきはずの物を探しているらしいのだ。
それは恐らく、俺の体を探しているのだろうと察した。
何もない壁に顔だけがぽつりと浮き出ているのは不可解で非現実的だからだ。

すると、少女の薄紅色の唇が動いた。

「お兄ちゃんの体は何処にあるの??」

少女から発せられた言葉は予想通りの質問で驚くことはなかったが、俺の姿を見ても怖がらないことに驚いた。

「ある理由で俺の体はこの壁の中にあるんだよ。しかし、君は俺のことが怖くないのか??」

少女の綺麗な瞳に自分の姿が写っているのが確認できた。
少女の瞳越しに自分の滑稽な姿を見て苦笑した。

「お兄ちゃんは優しそうな顔をしてるわ。きっと悪い人に体を埋められてしまったのね。かわいそうに…………」

少女は道端で捨て犬を見るかの様に哀れんで俺を見ている。