ドロップの缶の蓋を開け、苺味の飴を取り出して少女にあげた。
すると少女は飴を口に含み満面の笑みを浮かべた。

高級ディナーを楽しんでいるように飴を舐めている少女はこの家から二キロメートル程離れた家の娘らしい。
数年前、少女が犬の散歩中に犬のリードが切れてしまい、この家に犬が逃げ込んでしまったらしいのだ。

それから少女はおばあさんと仲良くなり毎日のように遊びにくるようになったのだとおばあさんは目尻に皺を寄せながら俺に教えてくれた。

それからも少女と縁側に座り一緒に飴玉を楽しんだ。少女は沢山の皿の上に飴玉を盛って皆で楽しくパーティを開きたいのだと俺に語ってくれた。

その笑顔は少しだけ大人びていたのが脳裏に焼き付いた。
蝉が騒がしく活動をしている真夏の日差しを受けながら少女は俺の左手を握ったまま寝てしまった。

俺の舌は少しだけ痛みを感じている。
飴の舐めすぎなのだろう、しかしその痛みよりも甘い香りが口の中を支配している。

それと、何とも言えない心地良さが縁側を囲むようにに膨らんだ。
そんな日々にも終わりはくるものだ。

夏休みの最後の日を迎えた、俺は日課となった縁側から見える景色を眺めている。
その隣には少女が座っているが、いつもとは少しだけ違いがある。

まつ毛が濡れており、目から頬、頬から顎にかけて雫が流れては落ちている。
俺の手を握り、吐息のような泣いていた。

そんな少女にドロップの缶を渡し、「また、来るからね」と言って俺は縁側を後にした。

少女はドロップの缶を大事そうに両手でしっかりと握っていた。




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