狭い正方形の中に少女が椅子に座っている。
椅子は二席あり、少女が座っていない椅子は木材で出来ており、角には花の彫刻が彫られていて美しい。
恐らく日本製ではなくイタリア製だろうと思う。

目の前には長方形のテーブルがあり、真っ白なテーブルクロスが敷かれている。テーブルの上には飴玉がぎっしりと盛られた皿が並べられている。

正方形の部屋の明かりはテーブルの真ん中に規則正しく一列に並んで置かれている数本の蝋燭の火だけだ。

その蝋燭の火で微かに見える程度だが少女の喜びに満ちた表情が揺らぐ蝋燭の火で見え隠れしている。

少女は自ら製作した椅子に腰を下ろしている。
俺が夢に見た状況と一緒だ、だが少し違う、少女の対面の椅子には俺は座ってはいないのと料理の代わりに飴玉が盛られた皿がずらりと並べられている。

肉で出来た弾力のある椅子に座っている少女が喋り出した。

「お兄ちゃん、この光景に見覚えがあるでしょ」

何故、少女が俺の夢を知っているのだろうか。

「驚いた顔も可愛いわね。実は私も同じ夢を見たの、正確に言えば私の夢という願望をお兄ちゃんの脳に投影させたのよ」

投影??願望??少女は一体何を言っているんだ。

「まだ、分からないの??まだ、私のこと思い出せないの??」

少女の瞳が光り、静かに涙が浸透していることを物語っている。

それから少女はショルダーバックから飴玉の缶を取り出した。

「これを見ても思い出さない??」

飴玉の缶、懐かしい記憶が流れてくる。
俺は何かを忘れているような気がした。

これは一体なんだ??
〜Distress signal!!, Help me!!Help me!!〜