「それは確かに大変そうだ。よく来れたね」


「歌を頼りに歩いてきたの。何度も転んだわ」


「ああ……確かに、服が汚れているね。髪にも葉がついてる」


 軽く払ってやれば、ありがとう、と少女は微笑みます。――その笑顔に、囚われたのは彼の方でした。


「……もう夜が明ける。帰った方がいい、目を覚ます時間だよ。妖精に逢えるのは夜の森だ」


 誤魔化すように彼は言い、少女の背中を押しました。