藤沢は、兄貴が死んだとき、どんな想いだったのかな。

俺は家族だから、そう簡単にはこの現実を受け入れられない。
と言うより、受け入れたくない気持ちなんだ。

藤沢は?

藤沢は今どんな気持ちでいるんだ?

藤沢にとって今、兄貴ってどんな形でいるんだ?


藤沢が兄貴の彼女だって知ってから、どんどん湧きあがる藤沢と兄貴の事。

聞きたい。
けど、聞けない。
聞いたところで、俺は慰める事は出来ない。
どっちかと言うと、俺も悲しいし悔しいから。

そこで俺は、一つの答えにたどり着く。


なら……。


「なぁ、藤沢。兄貴の事聞かせてよ?俺の知らない兄貴の事」

「え?」

「俺、ブラコンかってくらいに兄貴尊敬しててさ、兄貴が死んだって知った時はもう狂いそうなほどこの世を恨んだし、今でも正直立ち直ってないんだ」


藤沢は、俺の話を黙って聞いてくれていた。


「だから、俺が今まで知らなかった兄貴を知ることで、ああ、兄貴は幸せだったんだなって事をきちんと分かりたいんだ。話をする事で思い出して辛いなら、話さなくていいから」


藤沢は少し考えて、初めて俺に少しだけの笑顔を見せた。


「大丈夫。なんだか、神崎君には話さなきゃいけないような気がする。神崎君は、先生の事本当に好きなんだね。私と、同じって言ったら失礼かもしれないけど……神崎君が先生を尊敬しているっていうのは、私も同じだったから」


その笑顔とその言葉で俺は、少しだけ癒された気がした。

俺がたどり着いた答え。
それは、藤沢が言ったように俺と藤沢は同じ兄貴を想って、兄貴を亡くした悲しみを痛いほど分かってるから、慰め合いじゃないけど……そうする事で悲しみを少しでも減らせたらって思った。


俺の分も……藤沢の分も。

一緒に。