「ああっ、これ・・・
お口に合うかわかりませんが、
よかったらどうぞ!!」
真樹は紙袋からたい焼きを取り出し、
宗次朗に渡した。
「ああっ、どうも・・・」
「やっぱカッコイイなぁ~。」
「でしょ? 芸能人みたいでしょ?」
「芸能人なんやろが!!」
真菜がとぼけたことを言うと、
すかさず真樹のツッコミが入る。
まるで漫才夫婦。
「さぁ、真菜行くか?
じゃあ、失礼します。」
「うん。 宗次朗さんごめんなさい。
せっかく誘ってくれたのに・・・
今日は私抜きで行ってください。
本当にごめんなさい!!」
真菜は深く頭を下げて、
真樹の腕にしがみつき歩き出した。
もちろんバラの花束を受け取らずに・・・
「何個買ったの?」
「10個。 あっ、でも今
1個あげたから9個だ。
だから真菜は4個な。」
「ええっー!! 嫌だよ!!
私が5個!!」
「だめ!! 4個!!」
「5個!!」
「じゃあ、今1個食べるか?」
「うん!!」
真樹が袋からたい焼きを取り出し、
真菜の口に持っていく。
真菜はまるでネコのように
パクッとたい焼きにかぶりついた。
「ああっ、真菜かぶり過ぎ!!」
「美味しい♪」
「もう終わりな!!」
「嫌だぁ、もう一口!!」
「だめ!!」
「真樹ぃ~!!」
真菜はたい焼きに飛びつく。
「はははっ。」
そんな仲良くじゃれ合ってる二人を
宗次朗はボーっと見ていた。
「じゃあ、失礼します。」
宗次朗はボソッと呟いた。
真菜はある道場で座禅を組んでいた。
目を閉じて精神統一・・・
そして・・・
くわっ!!!
真菜は目を見開いた!!
決戦の時は来た!!
最終決戦・・・
これに勝って私は・・・
今世紀最大の対決が行われようとしていた。
ブォォォーン!!!
場面変わって港の第一突堤。
大きな貨物船の汽笛が響く。
コツコツ。
女性の足音が近づいてきた。
「真菜ちゃん。」
フレンチコートの襟を立て
現れたのは亜由美ちゃん。
「亜由美ちゃん。」
「そろそろだと思ってた。」
「うん。 やっぱり決着つけないと
前には進めないから・・・」
「そうね、私もそう。」
「容赦はしないよ?」
「うん。 今度こそ、
『まいった。』言わすから。」
真菜が微笑むと、亜由美も微笑んだ。
「場所は私の実家の旅館でいいかしら?」
「うん。お願いします。」
この時、目が合った二人の間には
凄まじい火花が散っていた。
「じゃあ、また。」
「じゃあ。」
そう言うと、亜由美はコートの襟を立てて、
また歩き出した。
すごいことになった。
今世紀最大の戦い、
相田真菜VS水際亜由美
お互いの体調不良も重なり、
ちゃんとした決着はついていなかった。
ちゃんと決着をつけたい。
真菜も亜由美も同じ気持ちだった。
そして真菜はこの勝負を期に、
あることを決意していた。
この戦いは大きく報道された、
新聞、テレビ、あらゆるメディアで
二人の戦いは注目を浴びていた。
これはすごい戦いになる。
これ以上の戦いはきっともうないだろう。
今までも、これから先も・・・
対戦、一週間前・・・
「真菜、亜由美ちゃんと
対決するって本当?」
「うん。」
真菜と亜由美が対戦することを
聞いた仁美は、真菜呼び出されていた。
「そっかぁ・・・
やっぱりやるのね・・・」
「うん。」
「どうにか戦わなくていい方法は無いの?」
「うん・・・それは無いよ・・・」
「そう・・・」
そう言って肩を落とす仁美。
「せっかく仲良くなれたから、
もう戦わなくていいと思ってた・・・
どうしても戦うのね?」
「うん。」
真菜の表情は真剣だった。
そして今までにないオーラが
体中から出ていた。
真菜の本気の気持ちを悟った仁美は、
「応援する。」と、言って
真菜の肩を軽く叩いた。
「仁美、私・・・この勝負を期に
引退しようかと思ってるの。」
「えっ!?」
真菜の突然の発言に仁美は目を見開いた。