「目、反らさないで下さい」


頭をガッと捕まれたのと同時に、安井の唇に、一ノ瀬のそれが重なった。

吐息以上に熱い唇の、容赦無い口付け。


抜けていく力。

嫌なのに増していく熱。


無い力を振り絞って、安井は一ノ瀬を突き飛ばした。

そして、そのままずるずると壁を伝い床に崩れ落ちる。


「……っ、はぁ……っ。何、すんだよ……!」


膝を抱え、顔を埋めた体勢で、安井は言い放った。


「何って、キスですよ」

「んなこと、わかってるわ!」

「俺、安井先輩のこと、好きみたいです」


一ノ瀬の嘘か本気かわからない告白に安井が顔を上げると、さっきと変わらない笑顔で、一ノ瀬は微笑んだ。


「俺はこんな可愛くねぇ後輩、嫌いだ!」

「俺は可愛い先輩、好きですよ?」



──end...?