「…なん、で…?」
何かをつぶやくように。
擦れた声が聞こえた。
『…え?なに…』
私の言葉に。
郁は口元を手で覆い。
視線をそらした。
「…なんで顔赤くしてんだよ…」
はッ?!
私、顔赤いッ?!
耳を押さえていた手を頬にあてる。
手のひらが熱を帯びた頬から熱を吸い取っていく。
…ヤバい。
かなり、熱い…。
これは。
郁の言うように顔が赤いのは間違いないと思う…。
恥ずかしくて。
郁を直視できなかった。
でも。
視界に入っていた郁の顔が。
ほんのり染まっていたように見えたのは。
気のせい、だったのかな…。
「あれ?友藤センセイじゃないですか?」
目の前にいる郁の向こうから聞こえた。
私を呼んだ声。
それは。
私が避けてきた人間の声だった。