無意識のうちに“郁”を呼んでた。





今、まぶたの裏に映るのは。

唇の端を少し持ち上げて笑う意地悪そうな顔。

ちょっと頬を赤く染めた横顔。

真っ直ぐに、私を捕えて離さない意志の強い瞳。



今、カラダが覚えてるのは。

郁のちょっと骨っぽいキレーな指が触れた感覚。

郁の薄いサクランボ色の唇が触れた感覚。

郁に抱き締められた暖かい感覚。



今、頭に響くのは。

“ウソだよ”ってからかう。

イタズラっこのような郁の声。

“茜”って囁いた。

胸がキュンキュンしちゃいそうな甘い声。

“茜が欲しいんだよ”

そう言った、胸が苦しくなる声…。