「お嬢様?」


「…」


何も言わずに
お嬢様は涙目で俺を見る



抱きしめたい



思わずそんな事を
思ってしまう



「どうなさったんですか?」

俺は平然を装って
お嬢様に尋ねる



…気付いてるくせに


最低だな、俺



「稜のばか」



お嬢様が涙目のまま
俺をにらむ


にらまれてもしょうがない


お嬢様は部屋を
出ていこうと俺の横を
通りぬける


急に愛しさが込み上げてきて
とっさにに俺は
お嬢様の手をひいて
抱きしめる



さっき絶対に抱きしめたり
なんてしちゃいけないと
思ったのに


頭では分かってるのに



心はお嬢様を
失いたくない


離したくないと思ってる