祠の中はいきなり下に降りる階段となっていた。

内壁はゴツゴツとしていて松明の灯りで怪しく煌めく、まるで鍾乳洞の中にいるような感覚におちいる。

「……まさかフレアが負けるとは思わなかったよ。というか前大陸王で勝てたのは僕だけか、寂しいものだな」

ワイズは独り言のようにそう呟いた。

「勝てたわけではありません。実際僕はフレア王のオーパーツを攻略することはできなかったし……」

「だが君はその立夏の腕輪を託された。そうだろう?」

「……はい」

シルクは忘れないだろう。

フレアから腕輪を渡された時のあの重みを、そしてフレアの言葉を。

「もう少し胸を張るといい。まずは大陸王を演じるところからだよ」

「大陸王を……演じる」

ワイズは振り返り、優しく微笑む。

「誰もが最初から立派な大陸王になれるわけじゃない。だが、民からすれば王となった瞬間からその者は大陸王に違いないんだ。

自信は最初は無い。当たり前だ。だが王が自信も持たずに大陸を動かしてしまったら民は不安になってしまうだろう?

だから演じるのだ。自信溢れる王を、いつしか本当の自信がつくまで民の為に、ね」