ミカエルは哀しげにシルクを見つめる。

『ルシフェルは私達天使の全てが尊敬する偉大な大天使でした。

聡明で威厳に溢れ、強く、そして誰よりも優しく、自信に満ち溢れていました』

満月がゆっくりと侵食されていく。

レンズを絞るかのように外側から次第に内側へと小さくなっていくが、反比例してその光の強さは増していく。

『しかし彼は高慢になり過ぎた。神の使いであるはずの天使が神を玉座から落とし、自らが神となろうとした。

そして神の怒りに触れ、彼は地獄に落とされ、堕天使となったのです』

次第に強く細くなっていく光は、一筋の光を四大陸のちょうど真ん中の海を照らす。

『彼は確かに間違っていた。しかし私は彼を憎むことなどできないのです』

一点に集中した月の光。

それに照らされない場所に闇が戻ってくる。

もうミカエルの表情は分からないくらいに辺りは暗くなっていた。

「……でも、ルシフェルはミカエルのことを憎んでいるようだった。

それは何故?」

ミカエルはしばし口をつぐんだ。

そしてシルクが謝ろうとした時に口を開くのだった。

『それは私が彼を地獄に落としたからです』