教室では先生の長い話しだけで終わった。
廊下から出て階段近くに上野 華奈(うえの かな)先輩がいた。
「華奈先輩!」
私は手を振りながら先輩の近くに寄る。
「おぉ、美月。マジで入学したなの」
「はい」
「これからヨロシクの」
「ヨロシクお願いします」
私はペコッと頭を下げた。
華奈先輩は柔道の先輩で同じ学校の先輩ではない。
軽い会話をしているとそこに背の高い男子が通りかかる。
−見覚えが…あっ女子と話してた男子。名前は…?
「壱成(いっせい)も入学したなの」
華奈先輩は壱成と呼ばれたその男子に声をかけたが
「あぁ…ハァ」
というような生返事しかしなかった。
めんどくさくなったのか彼はその場から逃げるように階段を下りて行った。
私はこの頃、彼に全く興味がなかった。