「愛斗?」


「俺、先に帰る」


「あっ!愛都!?」


愛都はそれだけ告げると、玄関に続く廊下を走り去っていってしまった。



私は愛都の姿を見届け、黒さんのいる、体育教官室へと向かった。



トントン



階段を上り、体育教官室のドアを優しくノックする。


「はい」


部屋の中から黒さんの声が聞こえた。



カチャ・・・



「失礼します」


「おー。なんだ宮瀬か。どうした?」


部屋に入ると、コーヒーの香りがした。

黒さんはコーヒーの入ったマグカップを教卓の上に置き、私に近寄った。


「あの、実は・・・あの時の・・・内野コーチのプレーをもう一度みたくて」


「内野のプレー?ああ、DVDか・・・どうしてだ?」


黒さんが私に不思議そうに尋ねた。