卒業式を終えた体育館。
ほかの生徒達が、最後の別れを惜しみ、玄関で集まっている最中、私は思い出がたくさん詰まった体育館に行きたくて、そこから抜け出した。
まだ体育館には卒業式で使われたパイプ椅子が並んでいる状態だった。
さっきまですすり泣く声が響いていたのに、今は春を待つ小鳥の声だけが響いている。
体育館から見える梅の木の花を見ながら、内野コーチがここを去ったのは、こんな晴れた日だったって思い出す。
体育館の非常口を開けて、第一体育館と第二体育館の間にある、外のコートに向かう。
外にあるゴールのポールに触れる。
「本当に私…ここから卒業しちゃうんだ……」
「コーコちゃん!」
その時、私の後ろから愛都がひょっこり顔を覗かせた。