残り時間は6秒。



「ハア、ハア……っく!」



足が重い…それでも駆けた。


8番と競り合う形で抜け出せない。


瑞穂がロングパスを投げた。


私は右手を伸ばした。

歯を食いしばって走った。



勝ちたい…勝ちたいっ!



「心空!トリプルスレット!」



その時、声が聞こえた。


その声は私が一番会いたかった人の声。



私は跳んだ。

そうだ。


トリプルスレット。


それはあなたが初めて私に向き合った時に教えてくれた、バスケットボールの基本。



伸ばした右手にボールが吸い付く。


私はそれを胸元に引き寄せた。


8番の姿はもう見えない。


私は…私は……!



パシュン……