高校総体前日。


私達は宿泊先の旅館で最後のミーティングを行うことになった。


男女合わせて50人が畳の大広間に集まった。

目の前には新しくコーチに入った丸谷さんと、黒さん。

黒さんが私達を見回し、目じりにくしゃっとしわを寄せて、優しく笑った。

そして私たちに語り始めた。



「今まで必死に練習してきた自分を信じて、そしてチームの仲間を信じろ」



信じる。

その言葉が心に響いた。


冬の試合の時、友梨が言ってた。

バスケは団体競技。

自分の足りないところをみんなが補いながら試合をしてくれてるんだって。



「試合で苦しいときが必ず来る。その時には勝った時の喜びや嬉しさを想像するんだ。その快感に比べたら、苦しさなんてたいしたことはない」



黒さんの言葉にみんなが頷いた。