「心空。ちょっと、いい?」


その時、友梨が私にくっついている愛都をひっぺはがして、私の手を引いた。


「え?何?」


「挨拶、行こう!」


「挨拶?誰に?」


「そこにいる大きい人。内野コーチに。明日からお世話になるんだからさ」


私は内野コーチの目の前にグイグイと押しやられた。


「内野コーチ!今、お話いいですか?」


「うん」


内野コーチは、私をマジマジと見つめる。


「心空!自己紹介」


友梨が背伸びをして、私の耳元にコソリと呟く。


「え?ああ、うん」


私は、内野コーチを見上げた。

こうして、誰かを見上げるなんて久しぶりだな。