「吉良……くん……」
「キミが隣りにいてくれれば、それだけで元気になる……から……」
だからずっと隣りにいて。
なんてクサいセリフを言ってしまったんだろうか。頭の片隅に残っていた冷静な部分が苦笑する。でも、本音だ。人間は弱ると素直になるって何かの本で読んだけど、本当らしい。
「吉良くん……風邪、移る……」
キツく抱き締めていたせいか、彼女が苦しそうに言った。その言葉でハッと我に返って、慌てて彼女を解放する。確かに、移ったら大変だ。ていうか、それ以前に僕はなんてことをしてしまったんだ!
「ご……ごめん!」
後悔の念に駆られながら彼女を引き離すと、突然、唇に何かが掠った。
「!」
一瞬だったけど……今の……。
唇に残る柔らかい感触。
「吉良くんの風邪、私にも分けて」
照れくさそうに微笑む彼女を見て、ぷつりと理性の糸が切れた。
小さな体に覆い被さって、真っ白い首筋に、そっと顔を擦り寄せた。
───微熱48.9℃
「風邪、わけっこしたらすぐに治りそうじゃない?」
(キミが隣りにいるだけで、体温10℃上昇するよ)