冷たい夜風が心地良い。こんなに体が熱くなっているのは、この風邪のせいだと思った。


「吉良くん?吉良くん?大丈夫?さっきからボーっとしてるけど……苦しい?」

「……え?」

……これは夢?それとも風邪で頭がイカレて、幻想でも見ているのだろうか?ずっと想っていた彼女が、僕の腰に腕を回して、僕の隣りで、僕のことを見上げている。……やっぱり可愛い。夢なら醒めないで、幻想なら消えないで。ずっとこうしていたい。

コツン。ひたいに当たった冷たい感触でハッとぼんやりしていた意識が戻る。彼女が見える。いや、むしろ彼女しか見えない。視界いっぱいに彼女の顔。

「やだ……すごい熱」

自分のひたいを僕のひたいに擦り付けながら、彼女は驚きの声を上げる。そりゃあすごい熱になるよ。キミにこんなことされたら……ってこれ、もしかして夢でも幻でもないのか!?ひたいに残るキミの感触が、これは現実だと物語っている。

「吉良くん!」

「は、ぃ?」

「私の家この近くだから休んでいって?」

「え?」

思わず耳を疑う。今キミなんて……?