「あー……ごめん。今日ちょっと体調悪くて」

「うわ、お前顔真っ青じゃん!いつも白いけど、いつにも増して白いぞ!」

大きなお世話だよ、と言い返すも気力もない。

「具合悪いなら最初っからそう言えよ!なんで無理してまで……」

そこまで言って、駿は「おっと」と口を紡いだ。不服だが、僕が彼女に想いを寄せていることを、駿は気付いているようだ。

「ごめん、今日は帰る」

彼女と駿を2人きりにして帰るのは正直気に食わないけど、今はそんなこと言ってられないようだ。言いようのない吐き気に促されるようにして立ち上がる。

「うん!無理はよくないよ!私、家まで送るから!」

「え……?」

あたかも当然のことをしているかのように僕と一緒に立ち上がった彼女。するり、細く白い腕が僕の腰に回される。

「てことで、駿!私、吉良くんと一緒に帰るから。あとよろしく」

「あと、って会計しかねえだろ!おごれってか!つーか俺に1人で飲めと!?」

彼女と揉めている駿と目が合った。やれやれと言わんばかりに溜め息をつくと、「今度何かおごれよ」と口の動きだけでそう言われた。

「わーったよ、早く吉良つれてけ。死にそうな顔してんぞソイツ」

「……ありがと、駿」

「……はよ行け」


ありがと?何がありがとなんだ?

「じゃあ帰ろ、吉良くん」

彼女に支えられながら店を出ようとした時、チラリと駿の方を見ると、意味深な笑みを浮かべてこっちを見ていた。あーあ、これは次会ったとき絶対冷やかされるな……。