憧れのあの子の誘いだったから思わず来てしまったけど、僕が後悔したのはその数時間後。
「───って、わけなんだよ!」
「あはは!それで、その後どうなったの?私も見たかったなあ」
駿の声はほとんど聞こえないが、あの子の声だけは鮮明に聴こえる。耳が勝手にあの子の声だけを判別しているんだと思う。澄んだ可愛らしい声。
「───で?吉良(キラ)、お前は一体どうしちまったんだよ?」
「……は?」
駿の突然の問いかけに、無意識に間の抜けた声が漏れた。
「は?じゃねぇボケ。お前今日全然飲んでねーじゃん」
テーブルを挟んで向こう側から、駿が僕の手元のワイングラスを指差している。グラスの中に目を落とせば、深紅の液体が僕の顔を映している。
今日は大学の友達である駿と彼女と、3人で飲むことになった。
でも、タイミングが悪いことに、今日の僕の体調は優れたものじゃなくて。熱っぽかったから、とりあえず解熱剤は飲んできたんだけど。
でも時間が経つにつれて、頭は痛くなるわ、寒気はしてくるわ、酒なんて飲めた状態じゃない。
それでも、彼女の誘いとあれば……と思って来たものの。……そろそろ限界かもしれない。