それは、まさかの再会だった。
夏休みが終わって世間が日常を取り戻したころ。
たまたま立ち寄ったコンビニで、身内が働いているなんて思わないだろう。

「なにやってんだ、丈司……」

「……レジ打ちだ」

「いや、論点はそこじゃねぇよ」

カウンターに載せたマンガ雑誌やら菓子やらを挟んで、しばし無言。互いに様子をうかがっていたら。

「え……えっ!?かなで王子!?知り合いなんですか百瀬さ、あっ、百瀬さんの百瀬ってもしかして」

アルバイトと思しき女の子が、いろいろと気づいたらしい。
商品の陳列作業を放り出した彼女は、頼んでもいないのにオレたちを店の裏手へと押し出して、満足そうに「ごゆっくり~」と手を振った。

人気のない用水路沿いの寂れた通り。フェンスに囲われたゴミ捨て場と、山積みにされた空のコンテナの前で、オレたちは立ち尽くす。顔も見たくなかったはずの丈司と向かい合っているというのに、今は不思議と強い拒否感がわいてこない。このタイミングで再会したことには何か意味があるのかもしれない。
オレは縁石に腰を下ろす。

「暇なコンビニだな」

いつキレられるのかとビビっていたらしい丈司も、オレに噛みつく気がないことを察知すると、肩の力を抜いてオレの隣に座った。

「そんなことないぞ。客がいなくても、やることはいっぱいある。例えば」

「そこまで聞いてねぇよ、いちいち説明してくんな」

「この鋭いツッコミ、懐かしい、可愛いかなでだ……!」

今の流れで、なぜうっとりするのか。このブラコン野郎のキモさをひさびさに肌に感じる。

「いや、調子に乗って悪かった。俺のせいで苦労かけてるのに……その……元気にしてたか?」

「見りゃわかるだろ。駿河といるほうが快適だ」

「そうか。元気そうでなによりだ」

「お前は痩せたな。……あの人には、ちゃんと食べさせてやれてんだろうな」

「まぁ、今のところは、なんとか。やっと仕事が見つかったんだ。小さな会社の事務員だ。やったことない業務に四苦八苦してるよ」

「だったら、なんでこんなとこでバイトなんかしてんだよ」

「こんなとこなんて言うな。ここも良い職場なんだぞ」

「質問に答えろ」

「ご、ごめんって。いや、ダブルワークしないとだな。金銭的にちょっと立ち行かないというか」

「お前、相変わらずほんっとグズだな。もっとうまくやれよ。給料いい仕事なんていくらでもあんのに、わざわざめんどくせーことする意味がわかんねぇ」

ごく真っ当な意見だろう、それなのに。

「そうだな。かなでの言うとおりだ」

言葉とは裏腹に、丈司は哀れみの目をオレに寄こしてきた。これは、説教スイッチが入ってしまったようだ。