ずっと一軒家に住んでたから、マンションでの生活は新鮮なことばかり。お家は、なんと最上階の十五階。出かけるときにはエレベーターを使わないといけないし、ロビーにはいつもコンシェルジュさんがいて、まるでホテルに住んでるみたい。お部屋も綺麗で、とくに新しいキッチンはとっても使いやすいの。カウンター式対面キッチンって言うんだって。リビングを見渡せるから、テーブルで待ってる駿河くんをひそかに観察できて幸せ……あ、オムライスの卵がやぶけちゃった。これはかなでの分にしよう。
三人そろって、いただきますをする。さっそくがっつくかなでの隣で、私はそわそわと落ち着かない。
料理を作るのは好き。誰かの役に立ってるって実感できるから。小学生の頃からがんばってきたおかげで、今ではちょっと自信を持ってる。だから料理当番を買って出てみたものの、食べてもらう瞬間は毎回すごく緊張してしまう。
オムライスとビーフシチュー、一口ずつ食べた駿河くんは……にっこり笑った。
「うん、お店で食べるのよりおいしいよ」
「よかった……!」
今日も褒めてもらえた。安心して、ようやく私もスプーンを手に取った。
駿河くんが目の前にいて、私の作ったご飯を食べてくれてる。おはよう、おやすみ、いってらっしゃい、ただいま……何気ないあいさつを交わすときも、そう。そばにいる、って驚きと喜びがわいてくる。引っ越してきて一週間たったけれど、まだまだ慣れそうにない。
ご飯を食べたら、駿河くんはさりげなく食器洗いを手伝ってくれる。こういう優しいところも昔から変わらない。二人並んでキッチンに立ってると、ちょっと新婚さんみたいでドキドキしてしまう。小さい頃は隣にいてくれるのが当たり前と思ってたけど、そうじゃないって知ってから、駿河くんと過ごすぜんぶの時間が大切でいとしい。
「ここでの生活、少しは慣れてきた?」
お皿を拭きながら、駿河くんが話しかけてくれる。この時間を少しでも長くしたくて、ゆっくりとお鍋を洗いながら、私は答える。
「うん。学校も近くなったし、新しいお部屋も素敵だし、とっても過ごしやすいよ。それより、駿河くんは大丈夫?お仕事忙しいのに、私たちの面倒までみなくちゃいけなくなって、大変じゃない?」
「何言ってるの、面倒をみてもらってるのは俺のほうだよ。あいちゃんが家事をしてくれるから、一人だったときよりずいぶん楽させてもらってるし。手作りの温かいご飯が食べられるようになって、むしろ前より元気になったくらいだよ」
ありがとう、とほほえむ駿河くんの顔色は、たしかに前より良くなってる。再会したとき、駿河くんは記憶より少しやせてて、疲れてるみたいだった。
私、少しでも駿河くんの力になれてるのかな。そう思うと嬉しくて、頬がゆるんじゃうのを止められない。
一日の終わり、育ちすぎて胸に閉じこめておけない気持ちを吐き出すために、私はノートを開いた。実際に体験したことや感じたことをもとに、物語をつくって文字にする。小さい頃のお話をつくるクセが形を変えた、これを私は空想日記って呼んでる。小学生のときから今まで、ほぼ毎日欠かさず書いてて、気がつけばノートは段ボール二箱分くらいたまってたから、お引っ越しのとき大変だった。いろんな出来事を書いてるつもりでも、読み返せばだいたい駿河くんのことばかり。今日も、駿河くんのことを書いてる。きっと明日も、私は駿河くんのことを書くんだろうな。
これ以上はないって思うのに、毎日、毎分、毎秒、どんどん好きの大きさが更新されてく。
私は、駿河くんが大好き。
三人そろって、いただきますをする。さっそくがっつくかなでの隣で、私はそわそわと落ち着かない。
料理を作るのは好き。誰かの役に立ってるって実感できるから。小学生の頃からがんばってきたおかげで、今ではちょっと自信を持ってる。だから料理当番を買って出てみたものの、食べてもらう瞬間は毎回すごく緊張してしまう。
オムライスとビーフシチュー、一口ずつ食べた駿河くんは……にっこり笑った。
「うん、お店で食べるのよりおいしいよ」
「よかった……!」
今日も褒めてもらえた。安心して、ようやく私もスプーンを手に取った。
駿河くんが目の前にいて、私の作ったご飯を食べてくれてる。おはよう、おやすみ、いってらっしゃい、ただいま……何気ないあいさつを交わすときも、そう。そばにいる、って驚きと喜びがわいてくる。引っ越してきて一週間たったけれど、まだまだ慣れそうにない。
ご飯を食べたら、駿河くんはさりげなく食器洗いを手伝ってくれる。こういう優しいところも昔から変わらない。二人並んでキッチンに立ってると、ちょっと新婚さんみたいでドキドキしてしまう。小さい頃は隣にいてくれるのが当たり前と思ってたけど、そうじゃないって知ってから、駿河くんと過ごすぜんぶの時間が大切でいとしい。
「ここでの生活、少しは慣れてきた?」
お皿を拭きながら、駿河くんが話しかけてくれる。この時間を少しでも長くしたくて、ゆっくりとお鍋を洗いながら、私は答える。
「うん。学校も近くなったし、新しいお部屋も素敵だし、とっても過ごしやすいよ。それより、駿河くんは大丈夫?お仕事忙しいのに、私たちの面倒までみなくちゃいけなくなって、大変じゃない?」
「何言ってるの、面倒をみてもらってるのは俺のほうだよ。あいちゃんが家事をしてくれるから、一人だったときよりずいぶん楽させてもらってるし。手作りの温かいご飯が食べられるようになって、むしろ前より元気になったくらいだよ」
ありがとう、とほほえむ駿河くんの顔色は、たしかに前より良くなってる。再会したとき、駿河くんは記憶より少しやせてて、疲れてるみたいだった。
私、少しでも駿河くんの力になれてるのかな。そう思うと嬉しくて、頬がゆるんじゃうのを止められない。
一日の終わり、育ちすぎて胸に閉じこめておけない気持ちを吐き出すために、私はノートを開いた。実際に体験したことや感じたことをもとに、物語をつくって文字にする。小さい頃のお話をつくるクセが形を変えた、これを私は空想日記って呼んでる。小学生のときから今まで、ほぼ毎日欠かさず書いてて、気がつけばノートは段ボール二箱分くらいたまってたから、お引っ越しのとき大変だった。いろんな出来事を書いてるつもりでも、読み返せばだいたい駿河くんのことばかり。今日も、駿河くんのことを書いてる。きっと明日も、私は駿河くんのことを書くんだろうな。
これ以上はないって思うのに、毎日、毎分、毎秒、どんどん好きの大きさが更新されてく。
私は、駿河くんが大好き。