友だちができたことを報告すると、お母さんは「今度みんなで写メ撮って送って!」と大喜びしてくれた。
「でもね、かなでったらひどいんだよ。調子に乗るなって言うの」
「あははっ、あの子らしい。あいりのことが心配なのよ」
「心配なのに意地悪言うの?」
「そうよ、大好きだから意地悪なのよ。ほんとこじらせちゃって可愛いんだから……あら、駿河くん」
「えっ!?」
振り向くと、私のすぐ後ろに駿河くんがいた。いつのまに?全然気づかなかった。
「お久しぶりです。そっちは、こんにちは、ですか?」
「そうよ、こっちはお昼。久しぶりね、駿河くん。ふふ、いつ見てもイイ男」
「涼子さんは相変わらずお綺麗ですね」
駿河くんは私のお母さんのことを、涼子さん、って呼ぶ。おばさん、って感じがしないんだって。お父さんのことは、おじさん、だけど。
「すみません、勝手に入ってきてしまって。電話してるとは思わなくて」
「いいのよ。駿河くんも一緒にお話ししましょ。いいわよね、あいり」
私は返事もできずに固まった。だって、駿河くんが私の肩越しに顔を出してきたんだもん!カメラに映りこむためなのはわかってるけど、近すぎるよ!
ガチガチの私をよそに会話は続いてく。
「うちの子たち、良い子にしてるかしら」
「もちろん。特にあいちゃんは、本当に良くしてくれてますよ」
「それはよかった。駿河くんには昔から迷惑ばかりかけてきたけど、今回の件でますます頭が上がらないわ。こんなに甘えてしまっていいのか……」
「いいんですよ。今の丈司に、あいちゃんとかなでを任せるのは難しいですし」
「丈司ねぇ。あの子がねぇ。まさかこんなふうになるなんて」
お母さんはがっくりと肩を落とした。
「丈司もそうだけど、かなでも意外だったわ。あんなに意固地になるとは思わなかった」
「ちょうど悩み事もあってナーバスになってるみたいなので、時期も悪かったんでしょう」
「悩み事?かなでが?」
思いがけない言葉に、つい口を挟んでしまった。あんなになんでもできる完璧なかなでが、なにを悩むことがあるんだろう。
「かなでもお年頃なんだよ。でも弱ってるところなんて見られたくないだろうから、向こうから切り出されない限り知らないふりをしてあげようね」
また振り向いてしまって後悔した。駿河くんのほほ笑みが息もかかりそうなほど近くにある。急いでうなずいてパソコンに視線を戻した。ダメダメ、いまは真面目な話をしてるんだから集中しないと。
「落ち着くまで丈司とかなでは引き離しておいた方がいいのかしらね」
「そうですね。できる限りサポートさせていただきます」
「ありがとう。駿河くんがいてくれて本当によかった。問題は丈司よ。いろいろあったうえに、かなでにまで拒絶されて、相当参ってるみたいなの。何もしてあげられないのが歯がゆくて。相手の子のためにも、どうにかしてあげたいんだけど」
ハッとした。いろいろ慌ただしくて大切なことを忘れてたよ。私はまだ丈司お兄ちゃんとマリアさんにきちんと「おめでとう」を言ってない。
「ねぇ、お母さん。私がお祝いしてもいいかな」
お母さんと、お父さんと、それからかなでの分まで。私がふたりをお祝いしたい。みんな難しい顔をしてばかりいるけど、結婚も、赤ちゃんができたことも、とっても嬉しいことだもん。
「いいに決まってるじゃない!あいりがお祝いしてくれたら丈司は泣いて喜ぶわよ」
お花が咲いたみたいな笑顔でお母さんが賛成してくれた。
「それなら俺にも協力させて」
「えっ。駿河くんも、いいの?」
「もちろん。一緒にお祝いしに行こう」
頭を優しくポンポンされて、頬がぶわっと熱くなった。昔は嬉しいだけだったのに、今はドキドキしてしまって恥ずかしくて、どうしたらいいのかわからなくなっちゃう。
「じゃあ二人とも、よろしくお願いね」
お母さんが画面の向こうでクスクス笑ってた。
「でもね、かなでったらひどいんだよ。調子に乗るなって言うの」
「あははっ、あの子らしい。あいりのことが心配なのよ」
「心配なのに意地悪言うの?」
「そうよ、大好きだから意地悪なのよ。ほんとこじらせちゃって可愛いんだから……あら、駿河くん」
「えっ!?」
振り向くと、私のすぐ後ろに駿河くんがいた。いつのまに?全然気づかなかった。
「お久しぶりです。そっちは、こんにちは、ですか?」
「そうよ、こっちはお昼。久しぶりね、駿河くん。ふふ、いつ見てもイイ男」
「涼子さんは相変わらずお綺麗ですね」
駿河くんは私のお母さんのことを、涼子さん、って呼ぶ。おばさん、って感じがしないんだって。お父さんのことは、おじさん、だけど。
「すみません、勝手に入ってきてしまって。電話してるとは思わなくて」
「いいのよ。駿河くんも一緒にお話ししましょ。いいわよね、あいり」
私は返事もできずに固まった。だって、駿河くんが私の肩越しに顔を出してきたんだもん!カメラに映りこむためなのはわかってるけど、近すぎるよ!
ガチガチの私をよそに会話は続いてく。
「うちの子たち、良い子にしてるかしら」
「もちろん。特にあいちゃんは、本当に良くしてくれてますよ」
「それはよかった。駿河くんには昔から迷惑ばかりかけてきたけど、今回の件でますます頭が上がらないわ。こんなに甘えてしまっていいのか……」
「いいんですよ。今の丈司に、あいちゃんとかなでを任せるのは難しいですし」
「丈司ねぇ。あの子がねぇ。まさかこんなふうになるなんて」
お母さんはがっくりと肩を落とした。
「丈司もそうだけど、かなでも意外だったわ。あんなに意固地になるとは思わなかった」
「ちょうど悩み事もあってナーバスになってるみたいなので、時期も悪かったんでしょう」
「悩み事?かなでが?」
思いがけない言葉に、つい口を挟んでしまった。あんなになんでもできる完璧なかなでが、なにを悩むことがあるんだろう。
「かなでもお年頃なんだよ。でも弱ってるところなんて見られたくないだろうから、向こうから切り出されない限り知らないふりをしてあげようね」
また振り向いてしまって後悔した。駿河くんのほほ笑みが息もかかりそうなほど近くにある。急いでうなずいてパソコンに視線を戻した。ダメダメ、いまは真面目な話をしてるんだから集中しないと。
「落ち着くまで丈司とかなでは引き離しておいた方がいいのかしらね」
「そうですね。できる限りサポートさせていただきます」
「ありがとう。駿河くんがいてくれて本当によかった。問題は丈司よ。いろいろあったうえに、かなでにまで拒絶されて、相当参ってるみたいなの。何もしてあげられないのが歯がゆくて。相手の子のためにも、どうにかしてあげたいんだけど」
ハッとした。いろいろ慌ただしくて大切なことを忘れてたよ。私はまだ丈司お兄ちゃんとマリアさんにきちんと「おめでとう」を言ってない。
「ねぇ、お母さん。私がお祝いしてもいいかな」
お母さんと、お父さんと、それからかなでの分まで。私がふたりをお祝いしたい。みんな難しい顔をしてばかりいるけど、結婚も、赤ちゃんができたことも、とっても嬉しいことだもん。
「いいに決まってるじゃない!あいりがお祝いしてくれたら丈司は泣いて喜ぶわよ」
お花が咲いたみたいな笑顔でお母さんが賛成してくれた。
「それなら俺にも協力させて」
「えっ。駿河くんも、いいの?」
「もちろん。一緒にお祝いしに行こう」
頭を優しくポンポンされて、頬がぶわっと熱くなった。昔は嬉しいだけだったのに、今はドキドキしてしまって恥ずかしくて、どうしたらいいのかわからなくなっちゃう。
「じゃあ二人とも、よろしくお願いね」
お母さんが画面の向こうでクスクス笑ってた。