「……これは使えるか…?」

 足元においてあった金属バットを拾ってバランスを確かめていると、凛花が言った。

「ここは、マキが……わたしのクラスメートが、殺されて……ばらばらで見つかった場所ですよね」

「ああ」

「兄……警察が、散々中を捜して、さっきまで見張りがいたのに、何かがいるんですか?」

 凛花が不思議そうな顔をして、僕を見上げた。

 ……もっともな疑問だ。

「昨日赤髪の男が、こっちの方向に向かって逃げていくのを、ちらっと見たんだ」

「……昨日は、確か警察にそんな事、一言も喋って無かったんじゃ……逃げた方向も、カーテンに邪魔されて判らなかった、って」

「詳しいな。兄さんに聞いたのか?
 ……悔しくて、犯人の居場所ぐらい自分で探してやろう、と思って誰にも黙っていたんだ」

 そういうことにしておこう。

 本当は、最後まで見ていたのは千里だった。

 最初の事情聴取では、僕も赤髪の男がどこに行ったのか全く見当もつかなかったのだ。

 一旦自分のねぐらに帰って、千里とちゃんと話をするまで。