木々の根の先よりは、浅い部分を掘っているらしい。

 アトランダムに並んでいる木々の間を縫って、土の小山が爆進する。

「あっ……!」

 凛花が、もう一度木の根につまずきそうになった時。

 僕は、凛花をふわりと抱きかかえた。

「す……鈴木先生、左……肩……!」

 凛花は、昨日の出来事を知っていた。

 追って来るモノの恐怖よりまず、負傷した肩を気遣ってくれたことに、僕の感情が動く。

「大丈夫」

 僕は囁いて、凛花をかかえて走る。

 お姫様を抱えるように、大切に。

 養護教諭の時みたいに、傷ついていくのを見たくなかったから。


 腕に抱いているのは、あの油断ならない刑事の妹だ。

 本気で走るわけにも行かなかった。

 それでも。

 進む速度が先ほどの倍になるようにスピードを上げても、土の小山も速度を上げてくるので、なかなか引き離せない。