「……ばけ……ものに……追われて……!」

『皇子、来ます。今度は土の中から!
 赤髪の男の気配ではありません……新手です!』

 千里も耳の奥で囁いた。

「……何!?」

 僕がもう一度、聞き返したとたん。





 ぼこばこばこばこ!





 凛花の走って来た方向からこっちに向かって、土が小山のように盛り上がって来た。

 でかい!

 そして、速い!

 まるで、人間ほどの大きさの巨大モグラが、地面のすぐ下を高速で這い進んで来るかのようだ。

「……!」

 僕は、凛花の手を引くと、モノも言わずに、逃げ出した。

 冗談じゃない!

 この巨大な土くれの下に、何がいるのか考えるのは嫌だったし、対決するなんて、もっと嫌だった。





 がっがっばばばば!




 なんて、早さだ……!

 相手は、土を掘りながら迫ってくるのに、人が……凛花が走るのとそう変わらない勢いでついてくる。