「葵、悪いけど…保険室で待っててくれる?案内するから」

葵に、申し訳ないとは思いつつ、御願いをした。

「うん。わかった」
コクンと頷いて、微笑む。

「ごめんね」
歩きながら、葵を見つめる。
葵は、大丈夫だよ…と私の頭を、ぽんぽんと優しく撫でてくれた。

柿崎は黙って、私達を見つめていた…。

保険室の前に来ると、立ち止まって私は言った。

「此処が保険室よ。多分、保健の…須藤真夜(すどう、まよ)先生が居ると思うんだけど…」

そう言った後、私はドアをノックした。
《コンコン…》

「はーい」
返事が返って来た。

「失礼しまぁ〜す」
保健室に入ると、パソコンの前に座って居る先生が居る。

「先生、御願いがあるんですけど」

「なぁに?来宮さん、改まって…」

「この子…月島葵君って言うんですけど、私の居候でして…来週辺りから、此処の学校に転入することになると思うので、その見学に来てもらってるんです。それで…」
先生は、ウンウンと頷きながら、私の話をしっかりと聞いてくれている。

「それで、授業が終わるまで、此処に置いていて欲しいってことよね?」

「えぇ…」

「わかったわ、だから安心して来宮さんは、授業に戻りなさい」

「はい、ありがとうございます」
私は、先生に会釈した後に、保健室を出た。