「はぁ…はぁ……」
息を切らしながら、屋上へたどり着くと私は、その場に座り込んだ。

チラリと、少年の横顔を見た。
息切れや、汗1つさえかいてない。
何なの…この少年は…?

私の中で、不安が増幅する。
2人きりになってしまったことに後悔し始める。

ずっと見続けてたせいか、それとも始めから気づいてたのか…、少年は私を見つめ返す。

綺麗な黒い瞳に、整った輪郭に白い顔。髪の色は赤茶色で、光に反射して透き通って見えた。

私は、一瞬ときめいた。
こんな綺麗な男の子っているんだ…と。

「思い出した?」
少年は、飾らない笑顔で私に質問する。

「わかるわけないでしょ…」
どう考えてみても、私の記憶にはない。

「そっか…」
一瞬だけ、寂しそうな笑顔を見せたと思うと、すぐに明るい表情に戻った。

「わかる訳ないよね」
少年は、歩きながら呟くと柵の前で立ち止まった。

「……だって君に会った時まだ僕は《人間になる前》だったからね」

少年は、意味不明な言葉を発した。


《人間になる前》?


…それって、どう言うことなの?


本当に、この少年は一体何者?