「……私は、何でこんなこと忘れていたんだろう…」


桜の木を見上げて、昔にあった出来事を思い出すことが出来た…。

涙が自然と零れ落ち、泣きじゃくった。まるで、幼い頃に戻ったような気持ちになりながら…葵も静かに隣で泣いていた…。

「ピーちゃん……」
私がポツリと呟き、一粒の涙を桜の木の下に落とした瞬間だった…。


葵は…呟く。
「……咲良……僕が、ピーちゃんだよ」

「え?…」
訳が分からずに、私は顔を上げる。

「僕が、あの時のピーちゃんなんだよ。…僕も、幼い頃の記憶が蘇って来たよ…」


「だって、ピーちゃんは…小鳥」

「あの時は、君は小さかったから…雀の雛だったんだよ」

こんなことってあるのだろうか?
私は、二度も同じ雀を助けていたんだ…。

「ピーちゃんだったんだ」
私が、にこりと微笑むと葵は頷く。


10年振りの再会は…こんなにも、すぐ近くにあったのに。私達はお互い気づいてなかった。


「やっと、会えたね…」
私は、葵に抱きついた。

「僕が、何で人間になりたかった本当の理由が…やっと分かった気がする」
葵は、ニッコリ微笑んで応える。


ー僕の初恋の相手は、君だー

いつもより、強く…そして優しく抱きしめてくれた葵の心臓の音が聞こえてくるようだった…。