沙羅と明徳と別れた私達2人は…お互い、どちらからも話かけることなくただ、黙って歩き続けた。

「ねぇ…」
私が口を開こうとした時に…

「危ない!!」
葵の叫び声に、遮られ…そして、抱かれていた…。又、胸の高鳴りが鼓動を早くする。

「危なかった…何だよ、あの車は…」
どうやら、葵は私を車から助けてくれたようだ。

葵の胸元からは、ほのかにビーチの香りがした。

いい香り…そうか、これは私達家族がいつも使っているボディーソープの匂い…。
葵も、居候とはいえ…同じくものを使っているんだった…と、改めて実感する。


思ったより、肩幅が広くて…骨っぽくてゴツゴツしているけど、しっかり筋肉が引き締まっていて…女の子とは全く別の身体なんだ…と思った。


「咲良…大丈夫?」
目をつぶっていた私に、不安そうな声が耳元から聞こえてくる。何だかくすぐったい。

…ハッと我に返り、慌てて身体を離す。
「う…うん…平気よ、ありがとう」


「良かった…」
ホッとした…と言うような表情で、私を優しく包み込むような暖かい笑顔。

私は、複雑な気持ちで…葵を見つめていた。

ーいつか、この笑顔が…私の目の前から無くなってしまうのではないかとー