夜明け前の桜道

授業が終わり、私は急いで保健室に向かうことにした。

ー早く、葵の所に行かなくちゃー

鞄を持って、教室から出ようとした時に、明徳と沙羅に声をかけられた。

｢咲良〜！一緒に帰ろうぜぇ｣
｢喫茶店でマスターの手作りケーキ食べて行きましょう♪｣

｢ごめん！…今日は、それどころじゃないんだ。又、今度誘ってよ｣

｢それは、仕方ないわね…｣
しょぼーんと、沙羅はへこんでいる。

｢咲良…お前、朝から変だぞ？あの男と何か関係でもあるのかよ!?｣

肩を揺さぶって、詰め寄る明徳に私は目を伏せて、｢…あの男の子は、月島葵君。私の家で居候することになったの。だから、それで忙しいの！｣

｢はぁ!?…居候って…お前…アイツ男だよな！｣

私は、明徳を振り切って廊下を走って行った。

｢何だよ!?…意味わかんねぇぞ｣
頭を、クシャッ…と掴んで難しい表情で、明徳は呟いてから、私の走って行く後ろ姿を黙って見つめていた。

｢……明徳、帰ろう｣
沙羅が、明徳の背中に手を当てて促す。

｢あ…あぁ…｣
絞り出すような声を出し、沙羅を見て頷いた。


ー２人共…ごめんー
私は、走りながら心の中で、何度も繰り返し謝っていた。