そんな、まるで本物の姉弟のような、栓のないやりとりをしていると、戸を叩く者があった。

「誰かおられませんか」

 誠実そうな男の声である。この村外れの家に客人があるようなことは、まずもって無い。

 御上からの使いがあった以外は、桃子の知るところ皆無だ。

「はい、只今」

 犬助が慌てた様子で戸を開くと、見知らぬ男が立っている。

 まなじりの垂れた、人の良さそうな顔をしているが、武人らしく具足一式を身に纏っていた。

 ゆがけをしているところから見て、射手と見える。

「この近傍に、桃子殿という御仁はいらっしゃいますでしょうか」