「大体、一人って訳じゃない。何でも、腕の立つ供をつけてくれるという話だ」

 不意に、御簾越しに聞いた御上の声を思い出して、桃子が言った。

 一言で終わるようなことを、回りくどく、ゆっくりと話す殿上人が桃子には解せず、不快な思いをした。

「そうなんですか、頼もしいですね」

 あからさまに胸を撫で下ろす犬助に、桃子は隠しもせずに溜め息を吐く。

「わたしが、お前ほどの体格を持っていたら、もっと色々するのに」

 色々って何ですか、と狼狽する犬助だったが、願ったところで体が乗っ盗れる訳でもない。

 その台詞からも分かる通り、桃子は比較的小柄だ。

 代わりに誰にも負けぬ身軽さを持っているが、腕力が欲しいと思わないでもなかった。

「あー勿体ない勿体ない。勿体ないお化けがでる」

「……何ですか、それ」