大将首を持って帰れば、誰も文句は言わないだろう。

 その後、新しい大将が立って、村を襲い始めようが知ったことではない。

「ほ、本当に行くんですか……今なら、断れるんじゃ……」

「恐いなら、お前は残ればいいじゃないか」

 むしろ、何故ついて来るのかが分からないとばかりに、桃子は呆れた視線を大きな体へ向けた。

「そんな……鬼ヶ島なんて危険な場所に桃を一人で行かせられる訳ないじゃないですか」

 桃子は泣き出さんばかりの顔を見上げて、頭を掻く。

 見かけばかり大きくて、気が小さい、それが桃子と共に拾われた犬助である。

 犬の癖に人の姿をしている、化生の身である。

 化生の身であるからには、普通の犬よりは神格が高いのだろうが、こう気が小さくては話にならない。