「あー、面倒くさい」

 身も蓋もないとは、このことであった。

 これが武門の生まれでもあったなら、光栄にむせぶやも知れないが桃子は村童だ。

 貴い方の仰せつけも、桃子の琴線には、一切触れない。

 また、普通の女童であったなら、恐怖に身を震わせていたのであろうが、桃子はこれにも当たらなかった。

「鬼退治なんて、馬鹿らしい」

 それが率直な思いであった。

 大体、鬼退治、という言葉が曖昧だ。種を撲滅せよとでも言うのだろうか。

 荒唐無稽だ。馬鹿らしい。

 かと言って、育ててくれた御爺の面子を考えれば、断れる筈もなかった。

 御爺が、決して強要してこないのが逆に桃子の心を固める。

「さっさと行って戻ってくるよ」