誰かな。そう思った瞬間、その女の子は、話しかけてきた。

「あなた、有川さん?」ちょっと、トゲのある言い方だ。

「そうですけど・・」わたしは、自然と敬語で話していた。

「ちょっと、話したいことがあるんだけど。駅まで、一緒に帰れる?」

わたしは、朋子の方に目をやった。

朋子が「私も一緒にいようか?」と心配そうに聞いてきた。

「別に友達がいてもかまわないけど。」そういって彼女は、歩き出した。

見た目、スラッとした美人だ。理系のクラスの人ではないかと思う。理系のクラスは、階が違って、階段を上がって、わたしたちの教室の上にクラスがあるために、話をしたことがない人が多かった。
彼女は、理系クラスの中で、なんとなく目立つ存在だったので、わたしは、覚えていた。
わたしと朋子は、急いで靴を履いて、彼女の後ろをついて歩いた。
彼女は、しばらく黙ったまま歩いた。誰も何も喋らない。