それは、この流れ橋のことだ。

この名前、単に橋が川の水に流されやすいように作られていることから、『流れ橋』とみんなに呼ばれている。
しかし、おじいちゃんが言うには、もう一つ理由があるそうだ。

今からずっと昔に、この小川の向こうに、火葬場があったそうだ。そして、そこで火葬された灰を、この川に流していた。

今では、信じられないことだけど、ずっと昔には、たくさんの人の灰が流れて、川を通じ自然にかえされていった。

橋は、この世とあの世の世界とをつないでいる役割があると理解されていたのではないかと思う。

川に流されていく魂が最後にとどまるところではないかと。

「見覚えのある橋を流すからね、なくなった人が天国に迷わず行けるだろうと思う。」おじいちゃんは、わたしに笑いかけた。

そして、「じいちゃんも、死んだらこの橋を渡っていくよ。橋がぼろいからちょっと心配だけどな。」

わたしも笑っておじいちゃんを見上げた。