そういうなり、お姉ちゃんは、わたしからカバンを引ったくり、手あたりしだいに、手にしたものを詰めていった。

「マンガと絵の具セット持っていきたいの。」今にも、泣きそうだった。このままでは、水に大事なものがすべて流されてしまう。

半べそかいていたわたしを、姉が必死に説得していった。「絵の具セットは、カバンにいれたよ。マンガは、諦めて。お願い。」

お姉ちゃんの顔が、雨でビショビショになっている上、顔に髪の毛がはりついていた。

天井を見上げると雨漏りしているようだった。

風も強く吹いていて、雨が窓にたたき付けられ、家が、大きく揺れていた。

ゴオーゴオー。こんなに恐い風の音を、今まで聞いたことはない。
あの時のわたしは、恐怖の極限の中にいたように思う。

高校生になった今までも、あの体験よりこわい思いはしたことがなかったくらいだ。

一分以上、いや何分過ぎたのか分からない。
これ以上は、限界だった。