スピナッチの町は、潮風に包まれた小さな港町だ。

 この町はシュヴァルツ地方最東端の町で、ビアンコ地方に近い事もあり、ビアンコとの交易の町としてもその名を轟かせている。

 交易の町らしく、沢山の種類の市場が町を賑やかにさせている。中には、武具や防具を売っている店があり、イオンはそこに寄ろうと、ルイスに申し出た。

 何でも、武具を購入したいらしい。畔道で、頻繁ではなかったが野獣に襲われた。ルイスは得意の格闘技で蹴散らす事が出来たが、イオンは魔術で応戦する事しか出来なかった。

 それが、イオンにとって悔しい事だと言うのだ。グローヴァー家に仕える家臣としての名誉が、損なわれるとも言っていた。

 店頭には、弓や斧などシュヴァルツ地方では少しばかり珍しい武具が置かれていた。弓と斧はビアンコで主に使われている武器で、シュヴァルツでは数えられる程しか使われていないだろう。