「おはよ」


「……」


返事がない。

多分、気付いていないのだろう。相田君だしな。


「おはよ」


「……んぁ、あぁ、はよ」


さっきよりも幾分声を大きくすると、ようやく彼は私に気付いて挨拶を返してくれた。

長年の勘とかそんな感じで、微妙に彼が驚いていることを読み取る。

きっと、いきなり隣に私がぽっと出現したように感じたのだろう。

ぼーっとしてるからなぁ、この人。

なんとはなしに彼の顔を見つめる。

人からは、全然感情が読み取れないとまで言われている彼の表情。

透明で、濁りのない。

透き通った、表情。

一瞬だけ目が合ったかと思うと、彼はまた空を見上げ、歩き始めた。

私は彼に歩調を合わせ、そのまま一緒にてくてくと歩き始める。