俺が千鶴に初めて会ったのは10年前。
ドがつく田舎に引っ越してきた日。
あの時は素直になんかなれなくてたくさん千鶴を傷付けた。
「おーい、ブス!」
「…ちょっと悠希!いつもいつも…はぁぁ…」
今も昔と変わってないかもしれないけどな。
でもな、お前は俺を理解してくれる数少ない奴だったりもするんだよ。
「はんっ…ブスにブスって言って何が悪い?」
ヒラリと舞う桜の花びらと、それに便乗するようにパタパタとはためく千鶴の制服。
―――…パンツ見えそ……
ヨコシマな考えに気付いたのかジトーッと俺を見ている千鶴。
「―…ヘンタイ。」
「あ?!お前のなんかみたくもねぇーっつーの!」
嘘、本当はみたい。
男は度胸!とか母さんに言われてもまさか
「パンツ見たい」
なんてヘンタイな事言えるかっつーの。
「サイテー…悠希なんて嫌い!」
「っ俺はもっと嫌いだ!大嫌いだよ!」
これもいつもの会話。
今日から高校生になる俺らは10年経ったってあの頃のままだ。
俺は素直になれない。
千鶴は俺を好きにならない。
いらつくのは俺が一方通行の気持ちでいるからだ。