泣かないって決めた。

悠希と一緒にいれる間はたくさん笑うんだ。



「悠希、今日どこで釣りするの?」


「…いつもんとこで良いだろ。」



さっきの事を気にしてないと言えば嘘になるけど、今は悠希といられる時間を大事にしたい。

だから気にしてないフリをしても、悠希は違う。

いつもみたいな元気はないし…


何より私を見ようとしない。



「私もできるかな?
教えてくれる?釣り。」



少しでも一緒にいたいから。

好きじゃない釣りだってやってみようって思うんだ。



「お前じゃ無理だろ。魚に馬鹿にされそうだしな。」


「ひどっ!」



よかった……、少しだけど私を見て笑ってくれた。

それだけで私は嬉しいよ…?

ただ、私を見て笑ってくれるだけですごく嬉しい。



「ひどくねぇ。事実だろ?」


「………私だってできるよ。


……………………多分。」


「じゃあ…お手並み拝見だな。」



口の端っこを持ち上げて厭味ったらしく笑う悠希にムッとした。


――…絶対、釣ってやる。


一つ、決意を新たにしてみた。




「そう言や……お前釣竿持ってないだろ。」



そうだ、釣りをするなら釣竿は必須だった。

釣りになんか全く興味ないし、やろうとも思わなかったからそんなの持ってない。



「……あ、……悠希の貸してよ」


「あ?無理。大事な俺の分身貸せるかよ。」



釣竿……どうしよう。