誰もいない暗い家は寂しさを助長させるってのはあながちハズレではない。
なぁ、千鶴……
俺さ…お前に一つだけ秘密にしてる事があるんだ。
ずっと言えない事。
千鶴だけじゃなくて、誰にも言えない秘密。
言えないんじゃなくて言わない。
言ってしまえば千鶴と一緒にいられなくなるだろうな。
少しでも…ほんの少しでも千鶴と一緒にいたい。
だから今はまだしられたくない。
もう少しだけ…この秘密を知られたくないんだ。
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「もしもし…母さん?」
『どうしたの?何かあったの?』
気づいたら携帯を手にしてた。
もう少しだけでいいんだ。
「………そっち行くのもう少し待ってほしいんだ。」
俺に時間をほしいんだ。
「ごめん…限界なのはわかってんだけど…」
『……わかったわ。母さんから話してできるだけ待ってもらうようにするから。』
母さんはわかってるんだ。
俺が千鶴をスキなのをわかっててこうやって言ってくれる。
『でも…無理はしない事。』
「わかってるよ。ありがとう、母さん。」
ありがとう。
俺に時間をくれてありがとう。
――…なぁ、千鶴。
もう少しだけお前の近くにいてもいいか…?
もう少し、もう少しだけだから。